ガンダムビルドダイバーズワールドチャレンジ ジムとボールの世界に挑戦!

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「Wish You Were Here 〜 あなたがそばにいて欲しい 〜」

「ボクたちが、セリカちゃんを誘拐?」

 接近警報がやまないそれぞれのコクピットで、ボールは目を丸くし、ジムはやれやれと肩をすくめた。

「あいつ、なんか勘違いしてない?」

 セリカは慌てて出した舌を引っ込めた。

 勘違いではない。なぜなら彼女は、ハンガーで『それ』に魅せられているヨシに背中を向けた去り際、ケータリング・スーツのロッカーに挟んだメモにこう記していたのだ『セリカは預かった。返して欲しければ、代わりにお前の店を我々に寄こせ 〜ソバ代を払えなかった二人より〜』

「三木亭は渡さない……そして、セリカも渡さない!」

 ヨシの強い声がポリポッドボールのコクピットに届く。ボールと同乗しているセリカは、パッと嬉しそうに微笑んだ。

 シンプルな賭けだった。ヨシが自分を取り戻そうとしてくれるかどうか、自分の方を見てくれるかどうか。

 そして、彼は来てくれた。

 セリカはボールとジムに、一抹の申し訳なさを添えてすべてを打ち明けようとした「ごめんなさい。ぜんぶ、彼の気持ちを……私への想いを確かめるためのお芝居だったの……」

 しかし、少しばかり遅かった。

「ずわんぬぅぇ〜ん(残念)!」

 ジムの心はすでに勝ち誇ってしまっている。

「なに勘違いしてんのかわかんないけど、あの店を一緒にやろうって誘ってきたのは、セリカちゃんの方なんで〜す!」

「彼女はもうボクたちにぞっこん夢中なんだ!」

 ボールが続く、威勢良く、

「あんたはとっくに用無しなんだよ! ね! セリカちゃん!」

「へ? あ、いや、あの……」

 ジムとボールに、一緒にヨシの店を乗っ取らないかと持ちかけた気持ちは、あながちすべてが嘘ではない。しかしそれは、もしこんな状況になっても、ヨシが『それ』に魅せられたまま迎えに来なかった時の腹いせ──何にせよ、どうやら二人に告げるのは勇み足すぎた。

「大丈夫、オレらがぜってーあいつから、あの店奪い取ってみせるから、あんな蕎麦屋更地にして、ご機嫌なパーリィショップに改装してあげるから!」

 そんなのお願いしてないからって言うかパーリィショップってなんじゃい!

「ジムの言うとおり! だから心配しないでセリカちゃん……いいや、セリカ!」

 ボールは、生まれて初めて姉妹以外の異性を呼び捨てにした。見つめる眼が前のめりに血走り見開いている。もはや彼女は、種明かしするタイミングを完全に失ってしまっていた。

 その時、遙か上空で、なにかが一瞬、陽に反射し米粒ほどに輝いた。

 ポリポッドボールの隣で天にビームライフルを向けていたジム・タービュレンスが、狙いを定め発砲を開始する、連射。

 しかしその輝きは、ライフルからのビーム軌跡を強引にねじ伏せるようにかわしつつ、凄まじい速度で接近し、次第に機影を露わにし──

「さっき攻撃してきたヤツじゃねぇ!」

 ジムはいったんトリガーから指を離し、目を凝らした。

 ボールが頭の中のエア・トリセツを検索する、しかし、

「大気圏突入用ウェイブライダー……じゃない、大気圏内機動用のウェイブシューターに変形した? ……でもない!」

「あの機体は──!」

 セリカは思わず息を飲んだ、

「ヨシが、最も配達が困難な出前先に向かう時に使う……『ウェイブダイバー』!」

 それは、ウェイブライダーのフライングアーマーとウェイブシューターのウィングバインダーとを同時に装備した、大出力重攻撃強襲形態。

 そのコクピットでヨシは、眼下に狙いを定めたポリポッドボールとジム・タービュレンスに目を据えながら、戸惑いに思案を巡らせていた。

「セリカが、あの二人を誘った? ……それは……本当なのか……」

 一方で、ぐんぐん迫ってくるウェイブダイバーから狙いを向けられているジムとボールは、しかし、余裕をみせている。

「こっちにはセリカがいる!」

 ボールがニヤリと言い、

「しかも、ジム・タービュレンスとポリポッドボールのどっちに乗ってるかはわかんねぇし!」

 ジムはまるで悪役面を浮かべた。

「やつは、オレらにクリティカルヒットを食らわせらんねぇ!」

 次の瞬間、ヨシのウィングダイバーが放ったビームライフルの攻撃は、確かに両機を直撃しかなったが、それでも間一髪、ジム・タービュレンスの脚を撃ち抜くところだった。足元の地面が大きくえぐられる。

 ボールとセリカが思わず大きく息を呑む。ジムは、上空を飛び抜け離脱するウィングダイバーに向け、背後からライフルを放った。しかしウィングダイバーは、まるでそのビームを引きちぎるかのように凄まじい速度で離れ去る、ヒットしない。 

 ヨシの声が届く。

「確かに致命弾は与えられない、だが、脚部を撃ち抜けば、地を這うしか出来ないお前たちのガンプラは、身動きがとれなくなる!」

 しかしジムは「はんっ!」と大きく鼻で笑うと、

「なら、そっちも身動きとれなくしてやんよ!」

 ジム・タービュレンスが急いで場を移動する──ビルとビルの谷間へ。そのあとをポリポッドボールが、多脚をワシャワシャと忙しなく動かしながらついてくる。

「なるほどね! ここならウィングダイバーの機動はめいっぱい制限される!」

「確かに──」言いつつ、彼方遠くで反転したヨシが、ビルとビルの間を抜けて、一直線に向かってくる。ジムとボールが狙いを定めようとしたその時、

「ウィングダイバーならな!」

 まさにマジックの如く、ウィングダイバーは一瞬にしてモビルスーツ形態──ゼータキュアノスに変形した。ボールは思わず目を丸くして、

「よっぽど精度高く造り込んだガンプラじゃなきゃ、あんなにスムーズな変形ギミック、再現できない!」

 一瞬身動きを忘れたポリポッドボールを見逃さず、ゼータキュアノスはビームサーベルを抜き、斬りかかった。

 我に返ったボールが、とっさに機体を後方にスウェーさせてかわす。

 セリカが「きゃっ!」と声をあげた。

「セリカ……!?」通信ごしに届いた悲鳴に、思わずヨシは鋒(きっさき)を止めた。その隙に、「んのぉ!」と、ジム・タービュレンスがランドセルのスラスターをマックス・パワーに吹かしてジャンプした、

「こんどはこっちが上をとったとか!」

 しかし、ヨシのゼータキュアノスもジャンプ、再びウィングダイバーに変形すると、いったん位置をとるべく、場を飛び離れようとした。

 ところがなにやら加速が鈍い。ジム・タービュレンスのビールライフルをテールに2、3発は食らっただろうか、それでもなんとか飛び去り距離をつくる。

「あいつ、パワーは凄ぇけど、ゴテゴテくっつけてるぶん、重くて鈍くさいんじゃね!?」

 ジム・タービュレンスは地に降り立つと、ビルとビルの谷間から飛び出し、超高層ビル群が見下ろす開けた建設現場跡に陣取った。ポリポッドボールもあとに続く。

「最高速は早いけど、加速とかマニューバはいまいちってやつかも!」

「ガンプラはゴテゴテ蕎麦はノビノビ、てめーの時代はどうやら終わったみてぇって感じだなヨシ!」

 ジム・タービュレンスがビームライフルを構えた。

「おとなしくセリカちゃんと店をボクたちに、ユー! 渡しちゃいなよ!」

 ポリポッドボールまでが、およそ対空火器としてふさわしくない180mmキャノン砲を構える。

 射線の先から、再びヨシのウェイブダイバーが突っこんで来る──そのコクピットでヨシは、グッと表情を鋭くした。

「なら、俺の本気……ぶつけてやるさ!」

 ウェイブダイバーが、フライングアーマーをパージし、形態をウェイブシューターにシフトした。とたんに機動がヒラヒラ空気を切るように軽くなる。

「パーツを捨てた!?」ジムは驚いた。

「マジですか!?」ボールは身を隠そうとした、間に合わない、砲を放つ、ヨシは機敏にかわし突進してくる。

 ジムは反射的に背後にポリポッドボールを守ると、夢中でビームライフルを撃ちまくった。その激しい弾幕の間すらも縫って、ウェイブシューターが突進してくる。まるでヨシの想いを熱いプロペラント(推進剤)にしてたぎらせながら。

「ぜんぜんノビノビじゃねぇ……これがあいつの、本気……!?」

 ジムは圧倒され、ボールはヨシの覚悟を前に、心の中になにやら火照るものが流れ込んでくるのを感じていた。なんだろう……まるでバトルを通して、ヤツが語りかけてくる。

「けれど……」

 ボールは、そしてジムも、何だか不思議な気持ちがした。フライングアーマーは確かにジム・タービュレンスとポリポッドボールに砲口の狙いを定めている。けれどヨシが想いを向けているのは自分たちじゃない……まるで。

 ボールの傍らで、セリカの気持ちも動いていた。ジムとボールに伝えなければ、自分がヨシの気持ちを確かめるために二人を利用したと。そして、その目的は、果たされたと……。

 ヨシのウェイブシューターは目前に迫っている。セリカを逃がすまいとするかのように、ポリポッドボールの脚を止めようと、ビームライフルをかまえた──その時だった、ウェイブシューターのコクピットに備えられている出前専用電話に、着信があった。

 反射的にヨシは受話器を取った。

「はい! おいしさと宇宙をまごころでつなぐ、ケータリングの三木亭です!」

 ヨシはハッとなった。注文は『具材全部乗せコスモ増し増し蕎麦』

 それは、店の中でも具材の種類も麺の量も最大で、もっとも手間が掛かる、コスモ(宇宙)増し増しの肩書きに恥じないメニュー。ヨシとセリカの二人が、力を合わせなければ完成しない、一品。

 ヨシはゆっくりと受話器を置いた、そして、

「セリカ……お前が必要だ」

 ポリポッドボールのコクピットに、ヨシの声が届く。

「お前がいないと……特製ギャラクシー蕎麦の注文が、受けられないだろう」

 暫く沈黙があった。 

 セリカの胸の中で、なにかががプチンと切れた。

 その音を、ボールは聞いた気がした。

「セリカ…………さん?」

「そっか……私はヨシにとって、ただ特製蕎麦を作る手伝いをするだけの……都合のいい女ってわけね……」

 可愛い顔から想像もつかないドスの利いた呟き。ボールは戸惑い、

「い、いや、そうじゃないんじゃない、かな……」

 しかし次の瞬間、セリカはヨシに向かって真正面から吠えかかっていた。

「だから聞いたでしょ! 私はボールとジムと一緒にあんたの店を乗っ取って! ぶっ潰して! アゲアゲのパーリィショップにするって決めたのよ!」

 叫びつつセリカは、ボールからポリポッドボールのコントロールグリップを奪うと、続けざまにトリガーを引いた。派手に連射された砲弾全発が、すっかり油断していたヨシのウェイブシューターのウィングバインダーに着弾する。

「えええええええーっ!」

 揚力と推力を失い墜落する直前、ヨシはウェイブシューターをゼータキュアノスに変形させた。ランドセルのスラスターで制動をかけ両脚で地に降り立つと、ポリポッドボールを睨みつける。まさか信じられはしなかったが、

「じゃ……そいつら二人が言ってたことは……」

「私はもう、あなたの所には帰らない! あんたの顔なんて見たくもない!」

「い、いや! やっぱ戻った方が、いいんじゃない、かな!」

 ジムは慌てた。どうにも面倒な事態になってきたぞ、いいやそれ以上に──

「違うんだってばヨシ! 聞いてくれ! なんかオレら、あんたの気持ちにもセリカの気持ちにも全然気づけてなかっただけみたいなんだって!」

 ヨシがバトルに込めた気合は、セリカを本気で思っている証だ。

 そして、こんな暴挙に出たセリカの想いも当然。

 その時、天から更なる機影が舞い降りてきた。それはバトルの冒頭、ジムたちに最初の一撃を放ってきた、

「PBWS!」

 ボールは、セリカにそれ以上トリガーを引かせまいと必死にグリップから引き剥がしながら、思わず声に出した。

 ジムも、次に起こるなにかに緊張した。

 彼らの目前で、ヨシが、ゼータキュアノスをジャンプさせた。空中でPBWSと合体する。両腕にハイパー・メガ・ランチャーの長砲身と勇ましさを形にしたビームスマートガンとを備えたゼータキュアノスの勇姿は、まさに圧巻。

「艦隊戦さなかの艦艇から注文かあっても届けられるようにと造り上げた、ゼータキュアノス最終形態……いままでそんな出前はなかったが……愛する三木亭を奪おうとしているお前たちが相手なら、初陣としてふさわしい!」

 ゼータキュアノスは再び着地すると、両の砲を同時に発砲した。眼も眩まんばかりの閃光は、あわやジム・タービュレンスとポリポッドボールのぎりぎりをかすめると、背後の高層ビルの一棟に着弾した。

 ジムとボールが振り返れば、高層ビルは一瞬にして焼失してしまった。

「待てってば!」

 返事の代わりにヨシは次弾の狙いを向ける、発射。今度も間一髪逃れた。高層ビルが、さらに一棟消失した。

「ヨシを止めねぇと、そのうちディメンションごとぶっ壊れるかもしんねえぞ!」

 ジムが焦ってボールに言う。

「でもどうやって! ヨシはボクたちの話なんて聞く耳持たないし! セリカは──」

 見れば、餌を狙う野良猫のように、ボールからポリポッドボールのトリガーを奪い返そうとしている。どっちももう、相手の気持ちに耳を塞いでる。目と目を逸らしてしまっている──

 ふと、ボールは「だったら!」と、思いついた。ヨシに聞こえないようフォース専用の回線を使い、ジムに向かって、

「時間稼いでほしい! 暫くヨシを引きつけておいて!」

「何する気だ!?」

「いいから!」

「なんだかわかんねぇけどわかった!」

 と、ジムは言ったものの、さてどうすれば。

 それはヨシも同じだった。セリカは自分に愛想を尽かし、奴らと組んで店を乗っ取るという。それは本当なのか? いいや、セリカ本人がそうだといったんだ。 

 ──なら、『それ』が俺に見せたかったのは、こんな結末なのか?

 思案し、動きをとめた隙をついて、ジム・タービュレンスがビームライフルをはなった。とっさにゼータキュアノスがハイパー・メガ・ランチャーとビームスマートガンを撃つ。かすめただけでジム・タービュレンスは左腕を持っていかれた。

 しかし同時にジム・タービュレンスのビームライフルも、ゼータキュアノスと合体したPBWSを貫いていた、爆発が本体を誘爆させる寸前にヨシはそれを切り離した。

 続けざまに、ジムは必死にビームライフルをはなつ。

 ヨシは、遠くない地面に、先にパージしたフライングアーマーが置かれたままになっているのを見つけた。咄嗟に駆け寄るとゼータキュアノスはそれを天高く投げ上げ、自分も高くジャンプした。空中で合体する。再びウェイブダイバーに形態をシフトすると、優位な上空位置から、ジム・タービュレンスに襲いかかろうとした。

 しかし彼は気づいていなかった、その更に上空に、ポリポッドボールの姿があったことを──正確に言えば、上空まで伸びる、高層ビルの屋上に。

 雄叫びとともに、ボールは、ウェイブダイバーに向かってポリポッドボールをダイブさせると、急いで後部ハッチを開いた。

 セリカが驚く。

 そんな彼女を、ボールは、思いっきり空に向かって突き落とした。

「え?」

 何が起こったのかわからなかった。

 気づけば目の前に、ウェイブダイバーがいる。そのハッチが開いた。

 気がついた時にはヨシも、夢中で大空の中にダイブしていた。

 風切り音の中に、セリカはヨシが自分を呼ぶ声を、ヨシはセリカが自分を呼ぶ声を聞いた。互いが互いを求めて腕を伸ばし、手を重ね指を絡ませ、身をたぐり寄せ、強く抱きしめ合った。ジャンプしたジム・タービュレンスが、無事だった大きな右手で、二人を優しくつつみこみ、そして再び地に降り立った。

 どうしてと聞きたいことは、なぜと問いたい想いはたくさんあった。けれど……抱きしめたセリカは柔らかく暖かかった。ヨシは力強く優しかった。

 二人とも、それで十分だった。


 ゼータキュアノスとのバトルで左腕を失ったジム・タービュレンスと、墜落してボロボロになったポリポッドボールを背に、ジムとボールが、バツ悪そうに笑んでいる。

「やっぱ二人あっての三木亭だね」

 ボールが言うと、

「適当言ってるし」

 セリカはゼータキュアノスを背に、微笑むヨシと寄り添いながら、目尻に小さく皺を寄せ苦笑した。

「でも嫌いじゃない。いい男よふたりとも。私なんかにコロッといってるなんてもったいない。もっと可愛い女子ダイバー紹介してあげるから」

「うそ? いつ? いま?」

 目を輝かせ声を合わせるジムとボールに、セリカはウィンクして、

「そのうち」

「やっぱセリカちゃん大好き!」

 おおきく腕を開いてハグしようとしたジムを、セリカが一歩退いてかわす。かわりにヨシがジムの前に出た。彼はしばしジムと見つめ合い、ハグの代わりに拳と拳をコツンと重ね、そして、ボールとも重ねた。

 セリカが微笑ましそうに見つめる。

「そういえば──」

 ふと、問おうとしたボールの言葉を、

「俺が、何に魅せられてたか、だろ?」

 と、ヨシは継ぎ、ポケットから『それ』を掴んだ手を出した、開いて見せる。

 ジムとボールは身を乗り出した。目を凝らす。

「金色の……ポリキャップ!」

「いつだったか、蕎麦のケータリングの途中に──」ヨシは、その不思議な光景を、いまでもはっきりと憶えている。「いきなり、目が眩むほどの輝きに包まれたことがあった。眩しいのに、目が閉じられない、目を閉じていないのに、なにも見えない。そんな中で声が聞こえた。このゴールデン・ポリキャップは、お前を正しき道に導いてくれる……と。俺は待った。だが、それがセリカを誤解させてしまった」

 ヨシはセリカを見た。

 セリカは小さくうなずいた。

「だがこうして俺は、本当に大切なものに気づくことができた……ゴールデン・ポリキャップのおかげでお前たちと深く出会い、そして、お前たちが導いてくれた……ありがとう」

 ヨシは、ゴールデン・ポリキャップを、ジムとボールに差し出した。

「え?」と、ふたりはヨシを見た。

「次は、きっと、お前たちの番だ」

 ジムとボールは顔を見合った。ボールがうなずく。ジムはそれを受けとった。

 次の瞬間、眩い輝きが二人を包み始めた。どこから照らしているのかわからない。

「ひょっとしてこれ……GBNからログアウト!?」

 ボールが気づいた。

「待った待った待った! まだ可愛いダイバー紹介してもらってないって!」

 慌てるジムに、セリカがバイバイと手を振る。

 ボールはハッと思い出した。

「じゃ、ヨシ、あんたが……レジェンドガンプラの作り手だったのか?」

「レジェンド? ……さあな。だが、輝きの中でその声は言ってた。俺と同じように、黄金に輝くポリキャップを授かったダイバーが、GBNのなかにあと、6人いるって」


 輝きが消え、ジムとボールは気づけば、ガンダムベースのログインブースに並び座っていた。しばらくぼんやりしたあと、同じタイミングでヘッドギアを脱いで──「そうだ」とジムは、手のひらを開いた。

 なにも握っていない。

 まるで夢を見ていたようにひらいたままの手を眺める。

 隣に座っているボールが、「ねぇ」と声を掛けた、振り向く。ボールがなにかを見つめている。視線の先に目をやると、ダイバーギアに置かれたMGジム・タービュレンスの脚もとに、ゴールデン・ポリキャップがあった。

 再び沈黙の時間があった。

「もしこいつがなかったら──」ボールは口を開いた「『闇金型マフィア』の陰謀で、ボクらずっとGBNに閉じ込められたままだったんだよね」

「みたいだな」

「どうしてゴールデン・ポリキャップのおかげで、ログアウト出来たのかな」

「さあな」

「これって、なんなんだろうね」

「…………」

「どうする?」ボールはジムに視線をやった「次またログインしたら、今度はどんなヤバいことに襲われるかわからない……もうやめる? GBN」

「冗談」ジムもボールの方を向いた「ヨシが言ってたじゃん、あいつみたいなレジェンドガンプラが、あと6機もいるらしい……ってことは」

 ジムはわくわくと笑みを浮かべた。

「まだまだ、レッツパーリィ出来るって事だろ!」

「だよね!」

 ボールも笑みをかえす。

 ふとジムは、MGジム・タービュレンスに視線を戻した。ゼータキュアノスとのバトルを思い返す。

 今日はたまたま生き延びた、けど──

「パーリィをサイコーに盛り上げるには……」

 呟く声に、ボールはジムを見た。

「サイコーにダンスが上手いガンプラが必要だぜ」

 ジムの口元が、たくらむような悪戯顔で微笑んだ。