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海老川兼武氏と清宮僚太氏による対談企画。前編では「リライジングガンダム」のデザインについて語っていただきましたが、後編は『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』に登場するメカ全体のデザインについて伺いました。コアガンダムとプラネッツシステムを通して新たなガンプラの遊び方を提案しようとしたおふたりの想いを、ぜひ感じてください。
コアガンダムとプラネッツシステムという発明
――前作『ガンダムビルドダイバーズ』を経ての『Re:RISE』ですが、海老川さんがデザインのコンセプトとして変えたところ、継承したところはありますか?
海老川 『Re:RISE』は、まず何よりもプラネッツシステムがキモだったので、この成否ですべてが変わるだろうなと思っていました。大げさな言い方ですけど、そこに命を賭けて全力投球したというか…(笑)、これがコケたら今後の作品の方向性に関わるとも思っていたので、最初は緊張しましたね。こちらがラフを描いてデザインに落とし込んでも、立体物にした際に破綻することもあるんです。今回はBANDAI SPIRITSさんが、一発目から素晴らしい試作を仕上げてくださったので、そこでまずは胸をなでおろしましたね。
プラネッツシステム
コアガンダムに搭載された連携合体換装システム。太陽系の惑星名をイメージしたサポートメカとの連携だけでなく、ドッキングして様々なガンダムにチェンジすることが可能。武装変更のみの換装とは異なり、機体特性を根本から変えることによって、合体した各ガンダムはまったく別種の性能を発揮する。
清宮 海老川さんの初期ラフから、求めていた内容にかなり近いデザインを提示していただいたので、こちらとしても大変有難かったです。とはいえ、プラネッツシステムにおけるジョイントの強度や嵌合の構造などは今までにないものだったので、それを商品としてきちんと成立させるべく、私も緊張しながら作っていきました。外観や形状を再現するだけではなく、嵌合や強度も立体物としてきちんと成立させなくてはならないので、その調整には最後まで苦心しました。
海老川 プラネッツシステムの特徴として、コアガンダムのサイズがどうしても小さくなってしまうので、腕にシールドをつけたいと思って接続用の穴を追加しようとしても、強度的な問題で苦労したり…。そのあたりの詰めの作業は、確かにこれまでにないものでしたね。
「あそぼう、ガンプラ」というコンセプト
――プラネッツシステムが実現したことで、これまでにないアイディアを盛り込めたところはありますか?
海老川 これはBANDAI SPIRITSさんからの提案でもあったのですが、組んで終わりではなくて、「いろんな機体のパーツを組み換えて遊ぶ」という部分は新しく提案できたかなと思います。例えば、新しい商品が出たときにそれだけで遊ぶのではなくて、それまでに出たガンプラと組み換えながら遊ぶことができる。それこそ、無限に遊ぶことができるわけです。
清宮 BANDAI SPIRITSとしても『Re:RISE』のガンプラを発表する際に、「あそぼう、ガンプラ」というキャッチフレーズをつけました。「作ろう、ガンプラ」というのが長年提示してきたものでしたが、今回はそこから一歩進んだ遊び方を提案できればと思いました。そういった特徴が浸透しはじめているのかなと思ったのは、アルスアースリィガンダムを発売したときですね。海老川さんと柳瀬さんに、アルスコアガンダムの構造をコアガンダムと同じフォーマットにしていただいたことで、ヒロトのコアガンダムにアルスアースリィのアーマーをつけたりと、組み換え遊びをするユーザーさんが爆発的に増えた印象がありました。
『Re:RISE』という作品がくれた貴重な経験
――最終回目前ですが、『Re:RISE』アニメ本編を見ての感想はいかがですか?
海老川 『ビルドダイバーズ』があった上で、『Re:RISE』があるわけですが、そのつながりが2nd Seasonになって、より明確に出てきたように感じます。『ビルドダイバーズ』はテイスト的には明るい作品だったと思うのですが、それにもじつは影があったというか。そういう視点で『ビルドダイバーズ』から見返してみると、影の部分がじつはいろんなところに散りばめられていて、両作を手がけられた綿田監督の構成の上手さを感じましたね。
清宮 物語に関して言えば、個人的にはカザミの成長が印象深いです。私たちも、カザミの成長やビルドダイバーズの一体感とシンクロしながらプラモデルを作っていったところはありますね。例えば、イージスナイトは元々、リライジングガンダムを成立させるために必要な機体という位置づけでした。それが、イージスという「盾」を冠する名前にしたことと、ビルドダイバーズ内でカザミが「盾」となっていくスタンスがうまくシンクロしていて。それをデザインやギミックに落とし込むことができたのは、プラモデルを作っていく中でも良い経験をさせていただけたと思っています。
海老川 デザイナーとしては、コアガンダムを完成させられたのが大きかったです。こういった構造を持った機体を、商品と連動する形でデザインできることはなかなかない機会ですので。基本的にこれまでのビルドシリーズは、既存機体のアレンジが大半でしたし、これまで続いてきたガンダムシリーズあってこその流れがありました。そこでコアガンダムとプラネッツシステムといった、完全に新しい機構を主軸として入れられたのは私にとっても刺激になりましたし、作品にとっても良かったのかなと思っています。
――最後に、ファンの皆さんに向けてメッセージをお願いいたします。
海老川 個人的にはビルドシリーズという枠はあまり意識していないのですが、『ビルドダイバーズ』から続く流れは『Re:RISE』までで、ひとつの集大成になるのかなと思います。もちろん、メカシーンもキャラクターシーンも、最終回は盛りだくさんになっていると思いますので、ファンのみなさんには最後まで是非楽しんでいただきたいです。
清宮 プラモデルとしては、シリーズごとに目指すべきものはもちろん変わってきます。中でもビルドシリーズは、宇宙世紀など既存の世界観ではできないことにチャレンジするのをひとつのテーマとしていました。結果として今回は、海老川さんをはじめ、スタッフの皆さんの力もあって、コアガンダムやプラネッツシステムを作り上げることができました。私たちとしては、これからもガンプラの可能性を追求していきたいですし、本作で得た経験値も使ってどんどん発展させていきたいと思っています。
(終わり)
(ライター:森樹)
※本インタビューは8月5日に収録されたものとなり、現在とは異なる情報が含まれている場合がございます。
海老川兼武
メカデザイナー。『機動戦士ガンダム00』シリーズからガンダムシリーズに参加。『ガンダムビルドファイターズ』をはじめ、ビルドシリーズでも多数のメカデザインを担当する。『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』ではコアガンダムを基点とするプラネッツシステムの構造やリライジングガンダムのデザインにも携わっている。
清宮僚太
BANDAISPIRITS ホビー事業部ガンダムチーム所属。別事業部からの異動後、『ガンダムビルドファイターズバトローグ』からビルドシリーズの企画開発に参加。ガンプラ以外にも「ねこぶそう」「軽トラぶそう」などの商品を担当。