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『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』第25話で登場し、視聴者の度肝を抜いたチーム・ビルドダイバーズの4機合体によって完成するメカ「リライジングガンダム」。形状も構造も異なる4機が、ありそうでなかったド迫力の「ガンダム」として姿を現しました。この機体のデザインについて、メカデザイナーの海老川兼武氏と、ガンプラの設計・開発を手掛けたBANDAI SPIRITS清宮僚太氏に語っていただきました。

リライジングガンダム
ヒロト達ビルドダイバーズが運用するコアガンダムⅡ、ガンダムイージスナイト、ウォドムポッド+、エクスヴァルキランダーの4機のパーツが合体して生まれる大型メカ。考え得る最大火力の解放を目的とした本機は超戦略級の必殺技「グランドクロスキャノン」を放つ。背部に大きなウイングを有するのも特徴である。必殺技を繰り出すときには、機体がゴールドカラーへと変化する。

リライジングガンダム、誕生の経緯

――「合体機構を持つガンダム」は、『Re:RISE』の打ち合わせ初期段階から構想があったそうですね。

清宮 『Re:RISE』は2018年末頃からメカデザインに関する打ち合わせがスタートしました。BANDAI SPIRITSとしては、「組み換え構造を持つガンプラを出したい」という意向があり、それを綿田(慎也)監督や海老川さんに提案しました。リライジングガンダムに関しては、2019年2~3月辺りに、最終的にはビルドダイバーズの機体がすべて合体すると良いね、という話が綿田監督から出たと記憶しています。3月段階で、海老川さんからもラフをいただいていますね。

海老川 確かメイの機体をどうするか話し始めた辺りに、綿田監督から合体させたいという話がありました。ただクライマックスを見据えての話だったのと、他の機体のデザイン作業にも入ってたこともあり、リライジングガンダムのデザインは長期的に進めていこうという形になりました。

――リライジングガンダムに関わる4機には複数のデザイナーが関わっていますが、それをひとつに合体させるのは大変ではなかったですか?

海老川 最初期の段階から、デザインを統一させて、すべてのパーツを合体させるのは難しいのでは、と思っていました。とはいえ、バラバラのパーツをどこまでひとつの形状として落とし込めるかは、何度も検証を重ねました。あとはこのボリュームが、実際のガンプラとして再現可能なバランスなのかをBANDAI SPIRITSさんと調整しながら進めました。

――海老川さんと清宮さんの話し合いはかなり綿密に行われたのでしょうか?

海老川 BANDAI SPIRITSさんにも立体検証をしていただいたり、完成までかなり長い時間話し合いましたね。

清宮 実は、ガンダムイージスナイトが大きなポイントでした。イージスナイト以外のメインキャラクター達の後継機――コアガンダムⅡやエクスヴァルキランダー、ウォドムポッド+は、初期形態から構造自体が大きく変わるわけではありません。ただ、イージスナイトはリライジングガンダムを成立させるためのジョイントとしての役割もあり、ほぼ全身を新規でデザインする必要がありました。それでいて単体のかっこよさやギミックも成立させないといけないため、求められる条件を成立させるのはパズル的な要素もあり、難しかったところかなと思います。

――リライジングガンダムにおける「推し」ポイントはどこですか?

海老川 やっぱり、バランスがまったく異なる4機が合体したときの迫力や、言い様のない圧倒感を楽しんでもらいたいです。人型として成立させるという意味では別のやり方もあったはずですが、4機の個性を生かしたまま合体させたことにより今までにない機体が出来たのではないかなと思います。

清宮 ビルドシリーズは、これまでのガンダム、ガンプラにないものを作ろうという意図もあって、ガンプラに関してもただカッコいいだけではない、モノとしての驚きにこだわってきました。そのガンプラの可能性を示すひとつの集大成としてリライジングガンダムがあると思いますし、物語においても登場に至るまでのドラマ部分に気持ちが込められているので、その相乗効果もあると思います。ストーリー、演出、デザイン、プロダクトといった制作側の要素が、劇中のビルドダイバーズが力を合わせるのと同じように融合してリライジングガンダムになったんじゃないかなと。ちょっとカッコをつけた言い方ですが(笑)。

――監督からこういう部分を入れてほしい、というような話はあったのでしょうか?

海老川 基本的には全機合体をしてほしいという部分ですね。あとは、構造上NGというものがあれば、それに対して新しい方向性を考えてくださったり、他にも色々とアイディアを頂きました。

清宮 監督も、最初期はすべてのパーツが合体することを想定されていたようですが、バランスやボリュームも考えた結果、別の形での合体方法を提案させて頂きました。特に、エクスヴァルキランダーの頭部をどこにジョイントさせるのかはかなり悩むところではあったので、敢えて合体からは外す選択をしました。

海老川 とはいえ、全パーツを使った合体も色々と検証しましたよね(笑)。

清宮 そうでしたね。全パーツでの合体で問題となったのが重量のバランスです。コアガンダムⅡは構造上、腕や背中にパーツを背負うわけですが、合体時に肩や腕といった小さいジョイント部のみで支えられる重量には限界がありました。検証したことの副次的効果としてあったのが、すべて合体させるのではなくて、それぞれの強化パーツや装甲をヒロトに託す、という図式が見えたことですね。単純に合体するのとは違う、「託す」というドラマ性ですね。

――カラーリングへのこだわりはありましたか?

海老川 まず僕の方でパーツが合体した状態のものをデータとして作成し、そこからイメージを数パターン作って提案しました。

清宮 ウォドムポッド+も、2つのカラーパターンを作っていただきましたよね。

海老川 それは、合体することを念頭に置いていたからですね。合体して必殺技を出すときのカラー案も数パターン提出して、最終的に金色になりました。

完成して感じた、作品の集大成としての機体

清宮 初期の段階から海老川さんに良いラフデザインを上げていただいたので、「これまでにないガンダム」という目指す最終形はブレませんでしたね。設計が完了して一旦自分で組んだときに、得も言われぬ迫力というか、今までのMSに当てはまらない力強さを感じました。

海老川 リライジングガンダムは、ひとりで机やPCに向かっていては絶対にできなかったですね。いろんなデザイナーさんの力とBANDAI SPIRITSさんの検証の積み重ねがあったからこそ出来たものなので、本当に集大成というか、素敵な機体になったと思っています。

――作品に導かれるようにチームワークが発揮されたというのはあながち間違いではないかもしれませんね。

清宮 そうですね(笑)。思い入れでいうと、最近は光造形で立体検証することが多いですが、今回は実際に立体物を手作りして検証しています。私も含め、手を動かすのが好きなタイプの担当がいたので、ガンプラを楽しみながら開発していたところはありました。例えばイージスナイトも、外部の開発スタッフの力も借りてミキシングビルドで機構試作を作ったりしました。なので自分達の手でガンプラをカスタマイズする劇中のキャラクターたちとも近いテンションで開発していたかもしれませんね。

海老川 まだ担当デザイナーが決まっていない時期でしたのでとりあえず検証用に描いたイージスナイトの素案を、BANDAI SPIRITSさんに立体検証をしていただきました。そうしたら、ギミックがモリモリになってチェックが返ってきて(笑)。これは面白いメカになりそうだなと。

――手作業を挟むことによる利点はありましたか?

海老川 私もプラモを組んで立体検証をしますが、やはり立体物があるかないかでデザインも変わりますね。立体物があって、そこからデザインに落とし込んでいくこともあるので。イージスナイトも構造を含め情報量が多かったので、僕とBANDAI SPIRITSさんで大雑把な立体検証をして、そこからデザイナーの柳瀬(敬之)さんにまとめて頂く流れになりました。ただ、基本的には接続部分など最低限必要な構造を共有しただけで、あとはエクスヴァルキランダーをデザインした寺島(慎也)さんも含め、自由にデザインして頂きました。その自由さもリライジングガンダムという機体の面白さに繋がったと思います。ただデザインする上では構造上の制約も足枷になってしまうので大変な作業だったと思います。

(後編へ続く!)

(ライター:森樹)
※本インタビューは8月5日に収録されたものとなり、現在とは異なる情報が含まれている場合がございます。

海老川兼武
メカデザイナー。『機動戦士ガンダム00』シリーズからガンダムシリーズに参加。『ガンダムビルドファイターズ』をはじめ、ビルドシリーズでも多数のメカデザインを担当する。『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』ではコアガンダムを基点とするプラネッツシステムの構造やリライジングガンダムのデザインにも携わっている。

清宮僚太
BANDAISPIRITS ホビー事業部ガンダムチーム所属。別事業部からの異動後、『ガンダムビルドファイターズバトローグ』からビルドシリーズの企画開発に参加。ガンプラ以外にも「ねこぶそう」「軽トラぶそう」などの商品を担当。